政策法務

問1. 2000年の地方分権改革後、自治体の事務でなくなったものを1つ選びなさい。

  1. 団体委任事務
  2. 法定自治事務
  3. 法定外自治事務
  4. 法定委託事務

正解=1

団体委任事務は廃止されました。

問2. 自治体の義務履行確保の手段として用意されているもののうち、ふさわしくないものを1つ選びなさい。

  1. 過料
  2. 違反者の氏名の公表
  3. 行政代執行
  4. 義務付け訴訟

正解=4

義務付け訴訟とは、行政訴訟法上の抗告訴訟の1つであり、一般私人等が行政庁に対し、特定の行政行為を行うよう請求する訴訟のことです。許可申請を拒否されたものが申請に係る許可をせよとの給付判決を求める訴訟などがこれに当たります(行政事件訴訟法37条の2)。

問3. 条例の総則規定を定める際に、入れなければならない規定としてふさわしくないものを1つ選びなさい。

  1. 目的規定
  2. 趣旨規定
  3. 罰則規定
  4. 定義規定

正解=3

罰則規定は、通常は、総則規定、実体規定、雑則規定が終わった後に入れるものであり、罰則規定の後に附則規定が入るのが普通です。

問4. いわゆる「上乗せ条例」の説明としてふさわしいものを次のうちから1つ選びなさい。

  1. 制定したい条例に加えて、その条例の実効性を増すために上乗せして提出された条例
  2. 国の法律と同じ分野を規制する条例において、法律が規定していない項目を自治体が独自に規制する条例
  3. 国の法律と同じ分野を規制する条例において、国が定めたものより重い罰則を盛り込んだ条例
  4. 国の法律と同じ分野を規制する条例において、国が定めたものより厳しい基準を盛り込んだ条例

正解=4

2は、いわゆる「横出し条例」です。1,3は、存在しないかありえないものです。

問5. A市の市民プールで、市が採用したプール監視員が少しの間目を離したすきに、遊泳中の10歳の児童がおぼれて水死する事故が起きた。この場合、A市が問われる責任として想定されるもののうち可能性の高いものを1つ選びなさい。

  1. プールは通常児童が立てる水位になっており、事故が起きることを想定していないので、水難事故は不可抗力として市は免責される。
  2. プール監視員も地方公務員とみなされ、目を離したすきの事故であることに鑑み過失が認められる可能性があり、A市に賠償義務が発生する。
  3. プール監視員は地方公務員ではないから、この限りでA市に責任はないようにみえるが、市営プールが公の施設であり、その管理に瑕疵があったことが認定されれば市に責任が発生する。
  4. A市とプール監視員とは委託契約関係にあり、事故はプール監視員の過失により起きたものであるので、被害者はプール監視員に民法上の損害賠償請求を行うことになる。

正解=3

国家賠償法2条1項の規定にされています。
1=児童は保護に値する年齢であり、市に責任がないという論理は成り立ちません。
2=プール監視員を地方公務員(臨時的任用:地方公務員法22条)とするか契約関係とするかは見解の分かれるところであり、国家賠償法1条が適用されると断言はできません。
4=プール監視員のみに責任が及びA市に責任がないというのは、いくつかの判例の流れからも想定しにくいものです(明石市市民祭り花火事故訴訟・神戸地裁平17.6.28、ふじみ野市市民プール事故訴訟・東京高裁平20.3.30等)。

問6. 行政課題を解決するために誘導的手法を採用する際に留意すべき事項として、次のうち妥当でないものを選びなさい。

  1. 補助金等の給付に際しては、合理的理由がないにもかかわらず、一方に給付し、他方に給付しなかった場合、違法になる可能性がある。
  2. 経済的手法を採用するに当たっては、必要以上の心理的圧迫を与えないことのほか、対象領域の妥当性などにも留意する必要がある。
  3. 公表される情報により市民の利益が守られることになる場合には、公表により利益を損なわれる者がいたとしても、その影響についての配慮はしないよう留意する必要がある。
  4. 相手方が従わないと言っているにもかかわらず、行政指導を執拗に継続した場合、違法になる可能性がある。

正解=3

1、2、4は正しい。なお、4は、行政指導はあくまでも相手方の任意の協力によって実現されるべきものであるとの行政手続制度の趣旨を確認しておく必要がある。 3 は、公表により影響を受ける者に取り返しのつかない損害を与えないよう留意すべきであるので、誤り。なお、「公表の方法や影響についての配慮において相当性を欠いた」として、国の損害賠償義務が肯定された、いわゆるO-157事件判決(東京高判H15.5.21)も参照のこと。『自治体法務検定公式テキスト』P.56参照。

問7. 国家賠償制度における公権力の行使に関する責任についての記述のうち、妥当でないものを選びなさい。

  1. 公権力の行使とは、公務員による一方的な命令・強制を伴う行為だけではなく、純然たる私経済活動を除き、非権力的な行為であっても公益的な行政作用をも含む概念である。
  2. 国家賠償制度の下における公務員とは、組織法上の公務員のみを指し、権力的な行政の権能を委任されていても、公務員法上の公務員としての身分を取得していないのであれば、民間人は公務員と評価されることはない。
  3. 自治体が責任を負うのは、公務員が職務上行った行為であって、自治体と関係なく勝手に行った行為については責任を問われないが、当該公務員が客観的に見て職務行為の外観を備えている場合には、「職務を行う」に当たるとされている。
  4. 賠償責任が認められるためには、公務員に故意又は過失が認められなければならないが、この場合における過失とは公務員が職上要求される標準的な注意義務に反することと理解されている。

正解=2

国家賠償制度の下における公務員概念は広いもので、組織上の公務員のほか、本質的に公権力の行使たる公務の遂行に携わる者をいう。民間人でも、権力的な行政の権能を委任されている者は、その権限を行使する限りで「公務員」に含まれる。したがって、2は誤り。その他は、正しい。『自治体法務検定公式テキスト』P.188~189参照。

問8. 地方自治法の「附属機関又は専門委員」に関する次の記述のうち、妥当なものを選びなさい。

  1. 執行機関は、附属機関から出された答申に法的に拘束されるため、これに従って事務を管理し、又は執行しなければならない。
  2. 附属機関に住民の意見を反映させるため、附属機関の構成員に公募の委員を加えることは、認められないわけではない。
  3. 専門委員は、附属機関と同様に、合議制の機関である。
  4. 専門委員の選任は、議会の議決を得て、首長がこれを行う。

正解=2

1は、附属機関から出された答申を尊重することは求められるが、法的に拘束されるものではないため、誤り。3は、専門委員は独任制なので、誤り。専門委員の選任については、議会の関与は予定されていないので、誤り。2が正しい。『自治体法務検定公式テキスト』P.220参照。

問9. 自治体が実施する「パブリック・コメント」に関する次の記述のうち、妥当なものを選びなさい。

  1. 国が行政手続法を改正し、意見公募手続を法定化したことから、自治体がパブリック・コメントを実施する対象は、行政手続法の意見公募手続の対象に相当する事項に限られることになった。
  2. 自治体が実施するパブリック・コメントに意見を提出できる者は、当該自治体の住民に限らなければならない。
  3. パブリック・コメントの対象となっている規則等を公益上、緊急に定める必要があったとしても、意見提出期間は、一律に30日間設けられなければならない。
  4. パブリック・コメントにより提出された意見は、十分に考慮されなければならない。

正解=4

1は、行政手続法は、自治体の判断で重要な行政計画案や条例案を対象とし、場合によって条例化することを阻害する趣旨ではないため、誤り。
2は、各自治体の判断ではあるが、一般に、広く意見を募集することが認められているため、誤り。
3 は、公益上、緊急に定める必要がある場合は、行政手続法では意見公募手続が義務付けられてはおらず(行政手続法39条4項1号)、自治体が実施するパブリック・コメントも、あえてそのような場合まで義務付ける意義がないため、誤り(なお、「一律に30日間」は全く理由がないため、明らかに誤り。)。4は正しい。『自治体法務検定公式テキスト』P.244参照。

問10. 現在、ほとんどの自治体で情報公開条例が定められている。しかし、開示請求権者の範囲については、一律に定められていない。そこで、「開示請求権者の範囲」として最も適切でない立法例を、次のうちから選びなさい。

  1. 当該自治体の住民に限っている。
  2. 当該自治体の住民のほか、通勤通学者、当該自治体に事務所・事業所を設置している者なども対象範囲としている。
  3. 当該自治体の住民を対象範囲としているが、外国人は一律に除いている。
  4. 誰にでも請求権を認めている。

正解=3

1は、「情報公開制度は住民の税金で維持運営されている制度である以上その制度の受益者は基本的に住民であるべきだ」とする納税者の権利から説明する考え方、「情報公開制度は行政の説明責任を果たすための制度であり、住民の側からすれば住民参加の1つである」とする考え方などがあり、いずれも住民自治の側面から説明されるもので、一定の合理的理由があるため、正しい。 2は、1を一歩進めて対象範囲を拡大しているため、正しい。 4は、情報公開請求権は憲法上保障された基本的人権である「知る権利」の具体化としての意義を重視するものなので、正しい。 3は、外国人であることをもって一律に対象外にしているので、一般に合理的理由が見当たらず、自治体法務に必要な原則である平等原則からして、最も適切でない立法例である。『自治体法務検定公式テキスト』P.251(「平等原則」についてはP.19)参照。

問11. 「自治体の仕事と法治主義」に関する次の記述のうち、妥当なものを選びなさい。

  1. 自治体は、何らかの法的な規範に基づき行政を執行している。
  2. 自治体は、国会が制定する厳格な意味での法律のみに基づき行政を執行している。
  3. 自治体は、ある事務事業について、国会が制定する厳格な意味での法律の直接の根拠がない場合は、条例を制定し、これに基づき行政を執行しなければならない。
  4. 「法律」を自治体の事務事業の執行の根拠になる法的な規範全体ととらえたとしても、「法律」の根拠がない事務事業は多く存在する。

正解=1

自治体は、何らかの法的な規範に基づき行政を執行しているため、1が正しい。 仮に直接的な法律や条例の規定が事務事業であったとしても、その予算の執行は地方財政法や予算決算会計規則に基づき実施され、作成する文書は文書取扱規程に従い必要な手続を経て公文書として位置付けられ情報公開条例等の適用を受ける。また、そもそも自治体職員は、地方自治法や地方公務員法の適用を受けて仕事をしている。よって、2、3、4は誤り。『自治体法務検定公式テキスト』 P.2参照。

問12 条例の立法事実の収集・整理をする時期として、次のうち妥当なものを選びなさい。

  1. 条例立案中
  2. 条例公布日から20日以内
  3. 条例施行日から7日以内
  4. 第1回口頭弁論期日の1週間前まで

正解=1

条例の立法事実は、制定後の条例の存続を支えるものでもあるが、そもそも条例の成立を支えるべきものなので、1が正しい。 2、3、4は、理由がないので誤り。『自治体法務検定公式テキスト』P.46参照。

問13. A市の情報公開条例では、「住民は、実施機関に対して行政文書の開示を請求できる。」と規定されている。A市では、この「住民」を文言どおり解釈すると「A市内に住所を有する個人」に限られると考えていたが、A市が保有する情報の一層の公開を促進するという本条例の趣旨を踏まえて、「A市内に主たる事務所を有する法人」や「A市内に存する学校に在学する者」などにも、開示請求を認めている。こうした運用をするに至った経緯として、A市は本条例の「住民」について「ある解釈」をしたことになるが、この「ある解釈」とは何か、次のうちから最も妥当なものを選びなさい。

  1. 拡張解釈
  2. 縮小解釈
  3. 変更解釈
  4. 反対解釈

正解=1

1の「拡張解釈」は、「法令で用いている言葉を通常使っている意味よりも少し広げて解釈すること」である。 2の「縮小解釈」は、「法令で用いている言葉を通常使っている意味よりも少し狭くして解釈すること」である。 3の「変更解釈」は、「法令で用いている言葉を変更して、別の言葉を当てはめて、別の意味に解釈すること」である。 4の「反対解釈」は、「ある法令の裏側には、その規定と逆の場合には逆の効果を生ずるという別の規定が存在するという解釈をすること」である。 よって、①が正解。『自治体法務検定公式テキスト』P.131参照。

問14. 行政庁が処分をする場合(口頭で処分をする場合を除く。)において、行政不服審査法上、相手方に対して教示しなければならないこととされている事項に該当しないものを、次のうちから選びなさい。

  1. 不服申立てをすることができる旨
  2. 不服申立てをすべき行政庁
  3. 不服申立てをする際に手数料を徴収することとなっている場合にあっては、当該手数料の額
  4. 不服申立てをすることができる期間

正解=3

「行政庁は、審査請求若しくは異議申立て又は他の法令に基づく不服申立て(以下この条において単に「不服申立て」という。)をすることができる処分をする場合には、処分の相手方に対し、当該処分につき不服申立てをすることができる旨並びに不服申立てをすべき行政庁及び不服申立てをすることができる期間を書面で教示しなければならない。」(行政不服審査法57条1項)により、③が正しい。『自治体法務検定公式テキスト』P. 166参照。

問15. 地方自治法の「指定管理者制度」に関する次の記述のうち、妥当でないものを選びなさい。

  1. 自治体は、公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるときは、「指定管理者」に当該公の施設の管理を行わせることができる。
  2. 「指定管理者」に公の施設の管理を行われることは、条例の定めるところによらなければならない。
  3. 株式会社は営利を目的とするため、「指定管理者」として指定することができない。
  4. 自治体は、指定管理者の指定をしようとするときは、あらかじめ、当該自治体の議会の議決を経なければならない。

正解=3

1、2は、「普通地方公共団体は、公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるときは、条例の定めるところにより、法人その他の団体であって当該普通地方公共団体が指定するもの〔略〕に、当該公の施設の管理を行わせることができる。」(地方自治法244条の2第3項)と規定されているので、正しい。 4は、「普通地方公共団体は、指定管理者の指定をしようとするときは、あらかじめ、当該普通地方公共団体の議会の議決を経なければならない。」(地方自治法244条の2第6項)と規定されているので、正しい。 3は、地方自治法244条の2第3項の「法人その他の団体」は株式会社を排除する趣旨ではないので、誤り。『自治体法務検定公式テキスト』P. 206参照。

問16. A市では、「個人情報の保護に関する法律」の趣旨にのっとり改正した「A市個人情報保護条例」が施行されている。そこで、A市の行政機関が保有する個人情報の取扱いについての次の記述のうち、妥当でないものを選びなさい。

  1. 個人情報を収集するときは、個人情報を取り扱う事務の目的を明確にしている。
  2. 個人情報を正確なものに保つよう、努めている。
  3. 個人情報を取り扱う事務の目的以外の目的で、第三者提供をする等の積極的な活用をしている。
  4. 思想、信条及び宗教に係る個人情報については、原則として収集しないこととしている。

正解=3

1の収集目的の明確化、2の正確性の確保、4のいわゆるセンシティブ情報の収集の原則禁止は、いずれも法律の趣旨にかなっているので、正しい。 3は、目的外利用及び実施機関以外のものへの提供の原則的禁止に反しているので、誤り。『自治体法務検定公式テキスト』P. 263参照。

問17. 国家賠償法に基づくいわゆる「営造物責任」に関する次の記述のうち、明らかに妥当でないものを選びなさい。

  1. 営造物の設置管理費用を国等が負担している場合は、当該国等にも賠償責任がある。
  2. 賠償責任を負った自治体等は、損害の原因をつくった者に求償できる。
  3. 損害賠償の責任については、民法が補充的に適用される。
  4. 被害者にも責任がある場合でも、過失相殺は行われない。

正解=4

1は、国家賠償法3条1項の規定により、正しい。 2は、国家賠償法2条2項の規定により、正しい。 3は、国家賠償法4条の規定により、正しい。そこで、過失相殺(民法722条2項)も適用されるので、4は誤り。『自治体法務検定公式テキスト』P. 193参照。

問18. 法的活動の種類には「立法法務」「解釈運用法務」「争訟法務」「評価法務」「審査法務」「基礎法務」があるが、「自治体におけるいっさいの法的活動とこれを支える法理論」と定義した場合における「自治体法務」に関する次の記述のうち、妥当なものを選びなさい。

  1. 「政策法務」が注目されてきた昨今においては、「立法法務」「解釈運用法務」「争訟法務」「評価法務」以外の法務の種類は、「自治体法務」とはいえない。
  2. 「危機管理法務」は「企業法務」の別称であるため、「自治体法務」とはいえない。
  3. 「自治体法務」と「基礎法務」とは、同義である。
  4. 「立法法務」「解釈運用法務」「争訟法務」「評価法務」「審査法務」「基礎法務」のいずれも、「自治体法務」である。

正解=4

1は、「立法法務」「解釈運用法務」「争訟法務」「評価法務」は「政策法務」に該当する活動であるが、これら以外の法務の種類も含めて「自治体法務」であるため、誤り。 2、3はまったく理由がないため、誤り。 設問において、「『自治体におけるいっさいの法的活動とこれを支える法理論』と定義した場合における自治体法務」とあえて説明していることから、容易に正解4が得られる。『自治体法務検定公式テキスト』P.2参照。

問19. 自治体法務のマネジメントに関する次の記述のうち、妥当でないものを選びなさい。

  1. 自治体の法務マネジメントの改革・推進に当たっては、組織管理、時間管理、例規管理の3つの視点から考える必要がある。
  2. 立法法務、解釈運用法務、評価・争訟法務の全体のサイクルあるいは各段階内におけるサイクルでの法務管理が求められる。
  3. 自治体職員は、法務能力や課題解決志向を向上させるための自治体法務に関する研修制度などを積極的に活用することが求められる。
  4. 自治体においては、条例の企画立案、実施・運用については、自治体自らが行うが、評価・見直しについては国が行う。

正解=4

1、2、3は正しい。4は、評価・見直しについても自治体において行われるので、誤り。自治体においては、法律の評価を行い見直しが必要な場合は、国に対する法律改正の要望を行い、この要望が受け入れられなかったときや十分でなかったときは、法律の解釈・運用の変更や自主的な条例の企画立案を行うことになる。『自治体法務検定公式テキスト』P.21参照。

問20. 国又は自治体(以下「自治体等」という。)の公の営造物の設置管理の責任に関する記述のうち、最も妥当でないものを選びなさい。

  1. 営造物に瑕疵があるとは当該営造物が通常有すべき安全性を欠くことであり、設置主体である自治体等は無過失で責任を負うが、その財政が窮迫しており、安全対策に膨大な費用がかかる場合にまで責任を追及するのは不可能を強いることになるので、その場合には免責される。
  2. 公の営造物とは、自治体等が公共の用に供している有体物をいい、道路や建物などの不動産が典型的であるが、車両や備品などの動産や警察犬などの動物も含まれる。
  3. 設置の瑕疵とは営造物に先天的に欠陥があった場合をいい、管理の瑕疵とは管理が不十分で後発的に問題が生じた場合などをいう。そのような瑕疵は、通常有すべき安全性を欠くことをいうが、天災などの不可抗力や施設の異常な使い方によって損害が発生した場合は含まれない。
  4. 営造物の設置管理費用を別の者が負担している場合であって、当該営造物に設置管理に瑕疵があって、市民に損害を与えた場合には、費用負担者もまた賠償責任を負う。

正解=1

公の営造物の設置管理の瑕疵に関する賠償責任は、施設を作って市民に提供している以上そこから生ずる危険については設置主体がその責任を負うべきとする危険責任をいう考え方が背景にある。したがって、安全性を欠くにいたっているのにこれを放置することは許されず、財政的対策費用がかかるという理由では免責されない。したがって、①は誤り。その他は、正しい。『自治体法務検定公式テキスト』P191ページ~P194ページ参照。

問21. 2000年の地方分権改革後において、自治体の政策に訴訟を活用し、もって自治体政策の実効性を確保しようとする考え方・具体的取組として、「政策訟務」が注目されてきている。そこで、この「政策訟務」の考え方・取組姿勢として、次のうち妥当でないものを選びなさい。

  1. 政策指向性や創造性を育む「政策法務」が「自治体法務」の土台に立つのと同様、「政策訟務」は、訴訟は不必要に起こされないようにすること、起こった場合でも自治体の考えを毅然と主張すること等の基礎的な争訟法務の取組を排除するものではない。
  2. 「政策訟務」を実践する場面は、「過去の訴訟を現在の政策の訴訟リスク考慮に活用する場面」と「現在起こっている訴訟を活用し、又は契機として、自治体の政策に反映していく場面」とに大別される。
  3. 現在起こっている訴訟を活用する場合には、メリットとデメリットを検討することが不可欠であって、上訴をしないほうがマスコミから好意的に評価される可能性が高いことのみをもって、上訴を断念するべきでない。
  4. 争訟はできる限り回避するべきであるので、「政策訟務」は、自治体が訴訟制度を活用し、訴えを提起することは想定していない。

正解=4

「政策訟務」には、訴訟結果を活用することのみではなく、不法占拠に対して民事上の妨害排除請求を行ったり、給食費の不払いに対して支払督促を行ったりするなど、自治体自らが訴訟制度を積極的に活用することも含まれているので、4は妥当でない。 1、2、3は妥当である。『自治体法務検定公式テキスト』 P.195頁参照

問22. 「立法事実」に関する次の記述のうち、妥当でないものを選びなさい。

  1. 立法事実とは、条例の目的と手段を基礎付ける社会的な事実であって、条例化の必要性・正当性を裏付ける項目と条例化の合憲性・適法性を裏付ける項目を収集し整理することが求められる。
  2. 条例を制定するに当たっては、実務上、「立法事実の説明資料」が必要になる。
  3. 「立法事実の説明資料」は、主に条例案検討段階において市民への説明責任を果たす場面で使用されるため、とりわけ規制条例については、条例施行後において裁判所で条例の適法性を主張する必要が生じた場面で作成すればよい。
  4. 合理性のある立法事実は、条例の成立を支えるとともに、その存続をも支える。

正解=3

「立法事実の説明資料」は、目的の正当性及び手段の必要性と合理性を裁判所に主張できなければならない「規制条例」こそ、条例案検討段階において作成されるべきである。よって3は、妥当でない。『自治体法務検定公式テキスト』46頁参照 で、4は妥当でない。 1、2、3は妥当である。『自治体法務検定公式テキスト』 P.195頁参照

問23. 「法治主義」又は「法律による行政の原理」に関する次の記述のうち、妥当なものを選びなさい。

  1. 「法治主義」とは、市民が「法」に基づいて行動する義務を負うことをいい、主権者である市民から負託を受けている行政は、「法」に基づかないで行政運営をすることが許されている。
  2. 「法治主義」は、行政の恣意的な判断により市民の権利利益を侵害することがないよう、市民の代表機関である国会・地方議会が定めた法律・条例で行政をコントロールしようとするものである。
  3. 「法律による行政の原理」のうち「法律の優位原則」とは、行政活動は法律に優位するという原則である。
  4. 「法律による行政の原理」のうち「法律の留保原則」をめぐっては様々な説があるが、およそ市民活動に影響を及ぼす行政活動はすべて法律又は条例の根拠が必要であるとする「全部留保説」が判例・通説の立場である。

正解=2

「法治主義」とは、様々な主体が、国民・市民の支持を得た「法」に服さなければならず、「法」に基づいて行動する義務を負うことをいう。1は、「法」に基づかないで行政運営をすることは許されていないので(⇒法治行政)、妥当でない。3は、法律が行政活動に優位するので、妥当でない。4は、「侵害留保説」が判例・通説の立場であるので、妥当でない。『自治体法務検定公式テキスト』P.16参照。

問24. 条例による知事の権限に属する事務の処理の特例に関する次の記述のうち、妥当なものを選びなさい。

  1. 市町村に移譲することができる事務は、法律、政令や省令又は都道府県の条例、規則や要綱に基づく知事の権限に属する事務である。
  2. 自治事務に限らず、法定受託事務についても、市町村に移譲することができる。
  3. 市町村の長が都道府県知事に対して知事の権限に属する事務の一部を移譲するよう要請する場合、当該市町村の議会の議決は要しない。
  4. 市町村に移譲した事務について、都道府県には市町村に対する包括的な指揮監督権が認められる。

正解=2

1は、要綱に基づく知事の権限に属する事務は移譲できないので、妥当でない。3は、議会の議決を要するので、妥当でない。4は、包括的な指揮監督権は認められないので、妥当でない。委譲できる事務は、法律、政令や省令又は都道府県の条例や規則により具体的に知事の権限となっている事務であり、自治事務か法定受託事務であるかを問わない。よって②が妥当である。『自治体法務検定公式テキスト』P.108参照

問25. A県では、特に環境の保全を図るべき地域については、一定の行為を対象に厳しい許可制を採用している。一方、そこまで厳しい規制的手法を採用するまでには至らないが放置まではすべきでない地域については、「ある規制的手法」を採用することにより、一定の行為が行われる事実を把握し、必要な場合に勧告や命令等をする制度も採用している。ここでいう「ある規制的手法」とは何か、次のうちから妥当なものを1つ選びなさい。

  1. 禁止制
  2. 罰則制
  3. 届出制
  4. 協定制度

正解=3

1の禁止制は、許可制よりも厳しい規制であるため、妥当でない。2の罰則制は、文脈からして唐突であるので、妥当でない。4の協定制度は、そもそも規制的手法ではなく契約的手法である上に、一定の行為が行われることについての事実を把握する手法ではないので、妥当でない。3の届出制が妥当である。なお、本問は、地域指定をして、許可制と届出制(「届出+勧告命令制」)といった2つの行政手法を組み合わせるものであり、各都道府県の自然公園条例などで採用されている。『自治体法務検定公式テキスト』P.66参照