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全国リレーシンポジウム 東京会場「パネルディスカッション」 レポート

平成24年2月20日(月)、東京新宿区の日本青年館において、自治体法務検定リレーシンポジウムが催されました。その第二部では、金井利之氏(東京大学教授)の司会のもと、第一部として行われた対談の内容(対談の内容はこちら)を受け、法的に具体的な視点から「地域主権改革と基礎自治体の役割」をテーマとして、高橋正樹氏(高岡市長)、五味裕一氏(さいたま市副市長)、北村喜宣氏(上智大学教授)と司会進行の金井氏の四名によりパネルディスカッションが行われました。 

 

その中で、具体的に地域主権改革一括法に対する評価と高岡市とさいたま市で行われている実際の条例改正に関する動向、法務能力を持った自治体職員の今後の育成などを焦点とし、議論が交わされました。

 

地域主権改革一括法に対する評価

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北村氏は、「未完の分権改革」という言葉が盛り込まれた2001年の地方分権推進委員会の最終報告において、事務事業自体を実施するかしないかの判断を自治体が自主的に行うことがもっとも重要であるとされたことに触れ、その観点からみると、今回の地域主権改革一括法において自治体が事務の選択をするのではなく、数値の選択をするという内容は、竜頭蛇尾になっているといわざるを得ない状況であると話しました。

 

北村氏のこうした現状認識を踏まえ、今回の地域主権改革について高橋市長、五味副市長は、劇的な変化ではないが長い目で見れば自治体の体質の変化にもつながるという期待を持っており、積極的に活用して推し進めていきたいと意気込みを語りました。

 

その中で五味副市長は、地域主権改革は具体的に以下の三つの成果をもたらすと語りました。

 

①     省令で規定されていたものを条例で書かなければいけなくなることから、その際にそれぞれの市町村における政策法務について考えるきっかけになる。

 

②     なぜこの規定にしたか議会、住民に対して説明責任を課されることは苦しいが、その過程を経ることは自治体にとってプラスになる。

 

③ 全国一律で定められていた基準が、地域の実情にあった形になる。

 

高岡市、さいたま市の動向

takaoka_takahashi.jpg地域主権改革一括法への評価は種々あるにしても、各自治体は本法にしたがって条例の制定・改正作業を行わなくてはなりません。

 

高橋市長によると、高岡市では3月議会に地域主権改革一括法による17本の条例改正を提出するということで、その作業過程では、はじめて条例の一体的検討が一斉に行われたと語りました。その結果、これまでタテ割で様々に流れていた情報が、今回、総合的に統一した視点から条例を点検することができたことは非常に良かったと語りました。

 

また、条例の制定者として検討を行うプロセスが重要で、その過程で説明責任や解釈責任が出てきたという成果を話しました。

 

他方五味副市長によると、さいたま市では、対応が必要な条例を洗い出し、審議会等の設置や各関係者へのヒアリング等を重ねており、2月議会には図書館法、下水道法等を含む9本の条例改正を提出したということです。

 

結果として、これまで政省令を変更するように国に対して要望していたことを、自治体において住民参画をしながら決められることや、迅速な対応が可能になったということを指摘しました。また今回、さいたま市では保育所の居室面積を国の基準よりも広い居室面積を取る独自の基準を採用したことについて、侃侃諤諤の議論が喚起されたとのことです。

 

その上で五味副市長は、地域主権改革一括法における権限移譲に関する部分でNPOの認証基準が埼玉県からさいたま市に移譲されたことにより、「新しい公共」を推進するという文脈の中で取り組んでいるという例を挙げながら、次なる分権改革に目を向けなければいけないと語りました。すなわち、県と市が二層制になるのではなく、内政に関する権限はパッケージとして丸ごと市に移譲されるように自己完結した形で事務ができるような制度にして欲しいと話しました。

 

自治体職員の育成

 

gomi_saitama.jpg高橋市長、五味副市長ともに、地域主権改革一括法に対する検討プロセスが重要であるという認識を示しました。そのアクターとしての自治体職員の今後の育成について、高橋市長は、高岡市のような人口規模8万ほどの自治体に法務に長けたベテランを配置するということはなかなか厳しいため、一般的な職員の法務能力の底上げを目指し、条例を策定する能力を養うために法令に対するセンスを磨いていかなければならないと語りました。

 

五味副市長は、地域主権改革一括法や政策条例、議員提案条例への対応では、これまで条例とはあまり縁がなかったセクションも条例を検討する事態になった教訓から職員の法制能力を鍛えていかなければならないと語りました。

 

さらに、今、「ワーク・ライフ・バランス」ということが言われているように、仕事だけではなく家庭や地域への貢献活動といった形で次第に求められる公務員像が変化していることに触れ、新しい公務員像が構築されつつある中でリーガルマインドを養うことは非常に重要なポイントであるとも述べました。

 

kanai.jpgのサムネール画像高橋市長・五味副市長の言葉を受け、北村氏は、自治体職員は職務についてからの勉強が必要だと認識することが重要だと指摘しました。

 

静岡市では事務事業の内容を法的視点から精査していくリーガルドックという取組みを行っているが、こうした取組みを経験したことで自覚的に問題を把握した職員が、検定などを活用して“他流試合”を行っていくことが法務能力のさらなる向上につながると話しました。

 

さらに、そういった取組みが重要であると組織が認識し、幹部の職員が若手をサポートしていくことが必要であると論じました。