結果分析データ

2020年度全体講評(基本法務)

 コロナ禍の下実施された2020年度自治体法務検定(基本法務)一般受検の検定試験は、申込者が例年の半数程度の364名に落ち込み、実際の受験者も289名にとどまった。しかしながら、かような極めて不自由な状況下でも果敢に検定試験に臨んだ熱心な受検者が300名近くに及んだということこそ銘記し、そうした受検者の皆さんに感謝を申し上げたい。 総受検者の平均点は1000点満点中509点で、ここ2年ほど500点を割り込んでいた平均点が500点の大台を回復した。また、直近5回の検定のうち3回は到達者が出なかったプラチナクラス(総点900点以上)を獲得した受検者も1名現れ、ゴールドクラス(総点700点以上)の達成者も総受検者の10%に迫り、最近2年間の減少傾向に歯止めがかかったように思われる。

 今年度の検定は、前述のようにコロナ禍の影響により受検者が大きく減少したという特殊事情があるので、例年の検定結果との比較は、あまり有意味ではないかもしれないが、分野別に若干の考察を試みたい。まず、憲法と刑法の平均点が60%を超え、一時の不振を脱した。行政法も平均点が約50%になり、前年度の極めて振るわない成績からは大分持ち直した結果となった。例えば、設問48は、一見枝葉の判例の知識を問うているように見えるが、実は損失補償制度の基本的な制度趣旨を理解していれば、論理的思考によって正解に辿り着くことができるという趣旨の設問であったが、想定を大きく上回る82%という高い正答率であった。判例や制度の知識の習得にとどまらない法的思考力の涵養という見地からも、受検者の法務能力の向上に期待を持たせる結果であった。民法は、例年平均点が50%前後であって、今年も同様の傾向である。最も配点が高い地方自治法は、平均点が46%にとどまり、最も振るわない結果となった。例えば、地方自治法上の関与と係争処理の制度に関する設問53は、正答率6%という低さであった。確かに、地方公務員の日常業務とは縁遠い仕組みに関する出題ではあるが、近年の普天間基地移設に係る辺野古沖の公有水面埋立をめぐる国と沖縄県の間の争訟や、ふるさと納税をめぐる泉佐野市と国の間の争訟など、世間一般でも注目された事件にも関わる仕組みであり、地方公務員の皆さんには是非理解を深めてもらいたいものである。
受検者の属性別でみると、その大部分を占める地方公務員の中では、都道府県職員が市区町村職員よりも成績がよい傾向は例年通りであり、特に今回は、その平均点の差が88点にも及んだ。基礎自治体の職員の皆さんのいっそうの奮起を期待したい。また、コロナ感染の拡大のため受検できなかった方々、そして今回の検定では思うほど成績が伸びなかった方々には、捲土重来を期して、来年度の検定を受検して頂ければ幸いである。 最後になるが、コロナ禍の困難な条件の下で本検定をつつがなく実施して下さった主催者その他の関係者の皆様に心からの感謝を申し上げたい。(講評 人見剛)

2020年11月
自治体法務検定委員会