結果分析データ

2020年度全体講評(政策法務)

 今回、新型コロナの影響で受検者が少し減少したものの、その約92%がクラス認定を受けるという大変良好な結果であり、平均点も660点を超えるという優秀なものであった。設問は、『公式テキスト』中の基本的なものから、『公式テキスト』以外の文献などから知識を得なければならない高度なものまで用意してあるが、高度な設問でも高い正答率のものがあり、コロナ禍の中でも本検定に取り組んだ受検者の方々の意欲の高さ、あるいは積極性や優秀さがうかがえる。
 以下では、今回の結果の傾向を取り上げた上で、検定委員会が期待する、今後の学習姿勢について、コメントをしていきたい。

 今回の配点に対する平均点の割合を分野別に見ると、『公式テキスト〔政策法務編〕』のほとんどの分野で7割以上の正答率となっており、例年と比べても受検者が万遍なく、かつ、入念に準備を進めてきたことがうかがえる。
 受検者のほぼ全てが正解した問題があった一方で、正解者が受検者の10%に満たない問題もあった。これは、徳島市公安条例事件と神奈川県臨時特例企業税条例事件の2つの最 高裁判決の基本的な判示内容・関係を問うたものであった。条例の違法性を問われた判例の判断枠組みは、とくに規制的な条例を立案する場合において、原案が適正な内容か否かを検討するときの重要な基準となる。受検者におかれては、『公式テキスト』のみならず、裁判所のウェブサイトで判決文を入手したり、各種の解説を手にしたりして、知識の定着を図っていただきたいと切に願うところである。もっとも、政策法務の一般的な水準に関わる問題については、例年と比べても10ポイント程度正答率が上がっており、受検者が政策法務の力量を飛躍的に高めてきていることがうかがえるところでもあり、大変喜ばしく思うところである。
 今年度の結果を見ると、『公式テキスト〔基本法務編〕』で制度的な事項をしっかり理解した上で、さらに『公式テキスト〔政策法務編〕』の関係個所へ読み進めていくようにすれば、法務能力向上に効果的なのではないかと考えられる。
 さて、検定委員会は、問題の検討と受検者の声などを踏まえて、常に『公式テキスト』の見直しを進めている。各年版は、極端な増量を避けるという観点から基本的な構成・内容は改めていないものの、政策法務の知見として受検者に体得してほしい事項については、毎年、記述を補正・追加している。また、政策法務論の発展を踏まえて、重要なテーマについては、検定委員会メンバー等が関連の著作や小論などを公にしている。
 まずは、2~3年に一度は『公式テキスト』の最新版と旧来の版とを比べ、どこを改めているのかという点に注目していただきたい(古本等を活用することも一案である)。
さらに、近年の『公式テキスト〔政策法務編〕』は、『公式テキスト〔基本法務編〕』との役割分担と連携を重視しており、基本法務の知見を政策法務で応用するといった趣旨での問題作成も進めている。『公式テキスト〔政策法務編〕』と『公式テキスト〔基本法務編〕』を縦横に活用していただきたい。また、政策法務では、公共政策論の知見が大切になるので、『公式テキスト〔政策法務編〕』の第8章を味読した上で、関連文献にあたるとよかろう。
 さらに、『公式テキスト〔政策法務編〕』の側注や、本文を掘り下げた内容について、巻末参考文献が扱っていることがある。検定委員会が吟味・厳選して載せているものなので、とくに最近の文献を眺め、政策法務(論)のトレンドを把握していただきたい。  なお、令和2年4月には、地方自治法及び民法(債権法)の改正法が施行され、自治体法務の実務にも、大きな影響を及ぼし始めていると思われる。ぜひ、次の『公式テキスト』2も手にされていただきたい。  個人で取り組むことに不安や限界を感じたときは、身近な人とグループを編成しながら、分担して報告し合う形で自己の知見を豊富にしていくという手法を試みてほしい。自治 体法務の能力向上は、関係者の自学・自修が基本である。受検者の各位が、今回の検定での好成績を持続させつつ、より一層の高得点を目指されることを願っている。(講評 田中孝男)

2020年11月 自治体法務検定委員会