結果分析データ

2021年度全体講評(政策法務)

 コロナ禍の影響が長く続く中、今年度の一般受検者は、昨年とほぼ同数となった。その85%余りがクラス認定を受けるという良好な結果であり、平均点も620点を超えるという優秀なものであった。設問は、『公式テキスト』中の基本的なものから、『公式テキスト』以外の文献などから知識を得なければならない高度なものまで用意してあるが、委員会の方で高度な設問として用意した問でも高い正答率となっているものがあり、本検定に取り組んだ受検者の方々の意欲の高さ、あるいは積極性や優秀さがうかがえる。

 以下では、今回の結果の傾向を取り上げた上で、検定委員会が期待する、今後の学習姿勢について、コメントをしていきたい。

 今回の配点に対する平均点の割合を分野別に見ると、『公式テキスト〔政策法務編〕』の多くの分野で6~7割以上の正答率となっているが、情報公開・個人情報保護の正答率が5割弱と若干低くなっている。ただし、例年は正解者が受検者の10%に満たない問題があったが、今年度は、正答率が最も低いものでも2割を切った設問は1題しかなかった。受検者の水準が平均的に底上げされてきていることがうかがえる。

 正答率が最も低い問題は、国・地方の役割分担に係るものであったが、地方自治法の役割分担規定は、個別具体の法令の解釈や条例と法律との抵触を考えるときの指針となることから、問題集に掲載されている解説も参考にして知識の定着に努めていただきたい。また、憲法が関連する問題については、検定委員会ではテキストに記載のある基本的な出題と考えていたにもかかわらず正答率が3割に満たないなど大変低くなる傾向がある。「基本法務」の試験でも、やや難易度の高い憲法の問題になると正答率が大きく落ちている。改めて憲法に関する知見の確認に意を用いていただきたいと願うところである。

 このように、政策法務の出題も、『公式テキスト〔基本法務編〕』で制度的な事項をしっかり理解した上で、さらに『公式テキスト〔政策法務編〕』の関係個所へ読み進めていくようにすることで、容易に解答できるようになっている。

 さて、検定委員会は、問題の検討と受検者の声などを踏まえて、毎年、『公式テキスト』の見直しを進めている。各年版は、極端な増量を避けるという観点から基本的な構成・内容は改めていないものの、政策法務の知見として受検者に体得してほしい事項については、毎年、記述を補正・追加している。また、政策法務論の発展を踏まえて、重要なテーマについては、検定委員会メンバー等が関連の著作や小論などを公にしている。

 できれば、『公式テキスト』の最新版と旧来の版とを比べ、どこを改めているのかという点に注目していただきたい(古本等を活用することも一案である)。さらに、近年の『公式テキスト〔政策法務編〕』は、『公式テキスト〔基本法務編〕』との役割分担と連携を重視しており、基本法務の知見を政策法務で応用するといった趣旨での問題作成も進めている。『公式テキスト〔政策法務編〕』と『公式テキスト〔基本法務編〕』を縦横に活用していただきたい。また、政策法務では、公共政策論の知見が大切になるので、『公式テキスト〔政策法務編〕』の第8章を味読した上で、関連文献にあたるとよかろう。

 さらに、『公式テキスト〔政策法務編〕』の側注や、本文を掘り下げた内容について、巻末参考文献が扱っていることがある。検定委員会が吟味・厳選して載せているものなので、とくに最近の文献を眺め、政策法務(論)のトレンドを把握していただきたい。

 令和3年5月には、いわゆるデジタル社会形成整備法が制定された。これにより、個人情報保護法制について法律への一元化がなされ、自治体の個人情報(保護)事務は、大きく変わることとなる。また、デジタル改革の進行により、業務の見直しも進むと考えられ、政策法務の役割も一層大きなものとなっていくと思われる。ぜひ、次の『公式テキスト』も手にされていただきたい。

 個人で取り組むことに不安や限界を感じたときは、身近な人とグループを編成しながら、分担して報告し合う形で自己の知見を豊富にしていくという手法を試みてほしい。自治体法務の能力向上は、関係者の自学・自修が基本である。受検者の各位が、今回の検定での好成績を持続させつつ、より一層の高得点を目指されることを願っている。

2021年11月 自治体法務検定委員会