結果分析データ

2023年度第2回全体講評(基本法務)

 2024年2月18日に実施された2023年度第2回の一般受検の自治体法務検定は、昨年9月に実施された第1回検定よりも受検者数は一定数増加したが、それでも87名にとどまった。もっとも、初めてオンライン受検のみを実施した昨年度の第2回検定は44名の受検者にとどまっていたことから、オンラインを利用した受検方法も徐々に自治体職員に定着しつつあるのではないかとも思われ、今後の進展に期待をしたい。

 少ない受検者数の条件下ではあるが、今回の検定結果の全体的な傾向を以下に紹介しつつ、若干の講評を加えておく。

 基本法務の総受検者の平均点は1000点満点中565点であり、今年度第1回の検定に引き続いて過去10数回の基本法務の検定中では相対的に良好な成績の回となった。プラチナクラス(総点900点以上)を獲得した受検者はいなかったが、ゴールドクラス(総点700点以上)の達成者は総受検者の2割近くの19.5%(17名)あり、シルバークラス(総点500点以上)以上の認定授与者は60名で、総受検者の約7割となっている(68.9%)。熱心な受検者の着実な準備の成果が表れたものと評価したい。

 各設問の正答率を分野別で見ると、「序章」が最も好成績で77.0%、続いて「憲法」(60.7%)、「行政法」(56.2%)、そして「地方自治法」と「刑法」が同率で55.6%、最後に「民法」(53.9%)という順番である。問題数の少ない「序章」分野は、正答率の変動が年度ごとに激しいので度外視すると、例年、比較的成績の良い「憲法」が6割を超える正答率であることを除けば、その他の行政法、地方自治法、刑法、民法の諸分野が、正答率55%の前後に固まっており、分野間の差異が少ないのが今回の検定結果の特色である。このことは、受検者の皆さんがテキストの各分野を一通りしっかりと学習している結果として積極的に評価したい。

 なお、各分野の正答状況をつぶさに見ると、例年もあったことではあるが、配点の大きい高難度の問題の正答率が高く、配点の少ない低難度の問題の正答率が低いという逆転現象が各分野で広く見られたところである。この現象が「行政法」の分野において特に顕著で、低難度の問題の正答率が47.1%、中難度の問題の正答率が60.4%、高難度の問題の正答率が61.7%という結果であり、出題者が想定している正答率の分布と真逆の結果となっている。

 例えば、設問11は、海上保安庁法、検察庁法などの個別法の条文を摘示して行政機関の相互関係のあり方を問う応用問題であるが、80%を超える正答率であり、設問59は、無効確認訴訟に関する行政事件訴訟法36条の条文を示した上で、課税処分の無効確認訴訟の提起を認めた最高裁判決の判示の意味を問う難度の高い問題について5割に近い正答率が得られている。これに対し、設問43は、行政機関の指揮監督関係に関するごく基礎的な知識を問う設問であるが、最も多くの解答が「行政機関の指揮監督権の行使が違法又は不当な場合、下級機関は行政不服審査法に基づいて不服申立てをすることができる。」という選択肢を妥当なものと選択していて、全体としても正答率は27.6%にとどまった。

 こうした結果は、出題者の考える難易度が自治体職員にとっての難易度と齟齬を来しているのか、あるいは設問の仕方や選択肢の設定が適切でないなどの技術的な問題があったのか、などの種々の原因が考えられるが、検定委員会においても頭を悩ましつつ作問に取り組んでいるところである。

  全国の自治体職員の皆さんが、法令の制定改廃や新判例などを踏まえて毎年改訂をしている自治体法務検定のテキストや検定の過去問を学習し、法務の能力を高めて、是非、本検定にチャレンジしてくれることを大いに期待したい。

2024年3月
自治体法務検定委員会