2024年度第1回全体講評(基本法務)
本年度は、オンライン受検に一本化した自治体法務検定を年2回実施する方式の2年度目であり、82名(市町村職員58名、都道府県職員21名、その他3名)の受検者があった。昨年度9月実施の第1回の一般受検の受検者数は、62名であったので、今回は一定の増加をみた。しかし、会場受検方式の時期においては、コロナ禍であっても250名以上の受検者があったので、これに比べると一般受検者数は低調に留まっている。オンライン受検は公務員の皆さんにはまだまだ馴染みが薄いのかもしれないが、場所を選ばずどこからでも受検できるオンライン受検の方式が定着し、より多くの方々が本検定にチャレンジすることを期待したい。
今回の検定結果の全体的な傾向を以下に紹介しつつ、若干の講評を加えることとする。
総受検者の平均点は1000点満点中541点であり、比較的好成績であった昨年度秋の第1回検定の平均点565点と比べると24点も低下した。500点未満のクラス認定がされなかった受検者も36名(43.9%)おり、前回と比べて平均の成績は芳しくない。他方で、プラチナクラス(総点900点以上)を獲得した受検者が1名おり、これは2022年度第1回の検定以来のことである。また、ゴールドクラス(総点700~899点)の達成者は総受検者の17.1%(14名)おり、この結果は、過去の成績に比して目立って劣っているわけではない。
以上のことは、得点分布の棒グラフをみると、最多層(23人)が400~499点に集中すると同時にそれに続く多層が500~799点の領域に広く分布していることに現れている。テキストを十分に学修して準備ができていた受検者が多数いたものの、同時に、準備が整わないまま受検を迎えざるを得なかった人達も相当数いたことを窺わせる。
各設問の正答率を分野別で見ると、「行政法」が65.9%が最も高く、次が「民法」(60.1%)、「憲法」(59.5%)、「刑法」(51.6%)、「地方自治法」(51.1%)、「序章」(25.6%)の順である。
「行政法」は、例年成績が芳しくない分野であるが、6割を大きく超えるこの成績は、14年間全16回の本検定のすべての回の中で最も良好なものである。難易度が高くない出題が比較的多かったようでもあるが、道交法の反則金に関するやや紛らわしい設問12や、国家賠償責任に関する長い判決文を読んで内容理解を問う設問19などについても、それぞれ65.9%、54.9%の正答率であり、学修の成果が窺われる。
他方、例年成績がよい「序章」が極端に悪い成績であったが、この分野からの出題は2問だけなので、ごく最近の立法動向を問う設問7の極端に低い正答率が大きく影響したものである。また、「地方自治法」の分野では、住民訴訟の4つの訴訟類型に関する設問2、執行機関法定主義が問われた設問11、議会の定例会に関する設問47など基本的な制度に関する比較的易しい問題の取りこぼしが目立った。
基本法務は、職務に直接関係する公法分野(憲法、行政法、地方自治法)のみならず民法・刑法のようにやや縁遠い分野も含む広範な範囲に及んでいるので、全体をカバーすることは相当に骨の折れる学修であることは間違いない。しかし、民法も刑法も最も基本的な法分野であり、法的思考のトレーニングにとって極めて重要であるので、おろそかにせず学修を積み上げてもらいたい。
2024年11月
自治体法務検定委員会