2025年度第1回全体講評(基本法務)
2025年9月28日に実施された今回の検定は、オンライン受検に一本化した自治体法務検定を年2回実施する方式になってから3年度目になる初回の検定であった。受検者総数は135名(市区町村職員105名、都道府県職員12名、その他18名)である。昨年度同時期の第1回の受検者は82名、直近の昨年2月に実施された昨年度第2回検定の受検者は88名であったので、そこから1.5倍以上に大幅に増加し、オンライン検定実施以降、1回あたりの受検者数が最多となった。しかし、会場受検方式の時期においては、コロナ禍の下であっても250名以上の受検者があったので、一般受検者数は、いまだ既往の状況には回復していない。場所を選ばずどこからでも受検できるオンライン受検の方式が定着し、より多くの方々が本検定にチャレンジすることを期待したい。
なお、今回の検定問題のうち、刑法分野の第7問に出題ミスがあった。ここに伏してお詫び申し上げるとともに、全員を正答としたことをご報告する。
今回の検定結果の全体的な傾向を以下に紹介しつつ、若干の講評を加えることとする。
総受検者の平均点は1000点満点中525点であり、500点の大台を割った直近の昨年度第2回の検定結果(495点)から30点の増加である。しかも、プラチナクラス(総点900点以上)を獲得した受検者も1名現れた。
500点以上のクラス認定がされた受検者が70名(受検者総数の約52%)であり、その内訳は、プラチナクラスが1名、ゴールドクラス(総点700点~899点)が15名、シルバークラス(500点~699点)が54名であった。この結果も、前回検定の結果からは大きく改善されてはいるが、過去の検定結果の大勢からすると、なお満足のいくものではない。
市区町村職員と都道府県職員の間での平均点に明らかな差があるのが、例外はあるものの従前の傾向であり、今回も、都道府県職員の平均点が市区町村職員のそれに比して80点以上の大差がついている。市区町村職員の奮起を促したい。
各設問の正答率を分野別で見ると、「刑法」(72.1%)を除いて、他の分野の正答率が、「序章」(57.8%)、「民法」(57.2%)、「行政法」(53.6%)、「地方自治法」(52.0%)、「憲法」(51.1%)と分野ごとの差異が少ないのが今回の検定結果の特色である。
刑法分野については、前述の出題ミスに起因する一問の正答率100%の特殊事情を考慮しても、高正答率であることは変わらない。罪刑法定主義に関する設問22、違法性に関する設問56などの基本的な問題の他、収賄罪に関するやや複雑な設問11についても正答率が高かった。民法分野では、不法行為に関する設問28、婚姻に関する設問34、債権の性質に関する設問64などの基本的な設問について取りこぼしは少なく、着実な正答率となっている。
他方、憲法分野では、地方自治の性質に関する設問14や法の支配と法治主義の異同に関する設問53のような基本的な問題の取りこぼしが多く見られた。また、行政法分野では、損失補償に関する設問5においては、憲法28条に係る相当補償説と土地収用法に関する完全補償説の違いが意識されていない答案が多数みられ、地方自治法分野では、例年の傾向でもあるが、関与に関する設問49などの正答率が低く、設問10の住民監査請求に関する設問では、監査委員の権限はあくまでも勧告権にとどまっていることが理解されていないことが目立つところである。
総じて、前回の本年2月の検定と同様、今回の検定においても、自治体法務の中心というべきいわゆる公法分野(憲法、行政法、地方自治法)の成績が振るわなかったといえる。今回も、民法・刑法の法学の基本分野にとどまらず、上記の自治体法務検定の中心分野もおろそかにせず、学修に励んでもらいたい。
