「できる」職員の育成

舟戸干士 様
倉敷市総務局総務部人事課職員研修所
舟戸干士 様
日頃、どのようなお仕事に携わられていらっしゃいますか?
職員の能力開発を目的とした集合研修の企画・実施、庁外研修機関への職員派遣、職場研修・自己研修の支援など人材育成を推進する仕事に携わっています。
職員の人材育成を推進する舟戸さん
実務をこなしている際に、法務能力が必要であると実感されることはありますか?
前の職場では、市営住宅家賃滞納者に対する法的措置(起訴前和解や訴訟など)に携わっており、法に基づき公平性を確保していく重要性と関連法規を勉強し実務遂行能力を高めていく必要性を感じていました。現在の職場では、法を直接適用する場面はありませんが、我々の仕事の根本には常に法があることは忘れないよう心がけています。
法務能力が必要であると実感するのはどんな場面ですか?
地域主権改革の進展により、自治体がやろうと思えばできる範囲は広がっています。与えられた権限を適切に行使し、豊かな地域を形成していくために、法を理解し法を使いこなせる職員の育成は、不可欠な要素だと感じています。
自治体法務検定を倉敷市で取り入れることになったきっかけは何ですか?
地域主権の進展を踏まえ、住民の視点で個性豊かな活力に満ちたまちづくりを目指し、職員一人ひとりが政策形成(法務)能力を高め、政策の実効性を確保することが必要となっています。しかし、法務向上の手段としては、例規の改廃技術の習得を中心とした法制執務や法律の概説的な研修の実施しかありませんでした。時代に対応する職員の能力向上を考える上で、近年の政策法務の視点から、集合型の政策法務研修を企画・実施するなど研修内容や手法等の見直しを進めていたところ、このたびの自治体法務検定の団体受検制度があることを知りました。この制度を活用することで、能力育成への職員の能動的な取組みを期待するとともに、組織としての政策法務能力のレベルアップを図ることができると考え、職員研修所から受検者を募集し、団体受検を実施することとしました。なお、政策法務の第一人者である先生方が監修されたレベルの高いテキストであり、ポイントが要領よくまとまられ、学習しやすいものであることも導入のきっかけの1つとなりました。
受検はどういった職員を対象に、どのように働きかけましたか?
全庁に向けて団体受検制度の実施を通知し、条件を設けず、広く職員に参加を呼びかけ、募集しました。団体受検の申込みの取りまとめ、会場の手配、事前準備等は職員研修所が支援することとし、一方、学習会の企画や開催は、受検者の自主性に任せることとしました。学習会については、経験豊富な職員にその主宰と講師をお願いすることとなりました。また、研修担当者である私自身も受検し、学習会に参加しながら、政策法務能力向上のあり方など、自らの体験を今後の研修企画・運営等に活かすよう取り組んできました。
職員に自治体法務検定の受検で何を期待していますか?
まずは、地域主権改革に対応する職員個々の法務に対する重要性の認識及び政策法務能力の向上ですが、今回の団体受検への取組みを通じて、自己啓発(自学)の意識の高揚、学習会等の職員の主体的な運営による職員間の交流等、「学び」へのいろいろな効果が期待できると考えます。
受検は自治体の公費ですか?受検者の私費ですか?
検定資格は個人に帰属するものであることから、受検者の私費によることとしました。
受検前の学習会はどのように実施しましたか?
団体受検申込者のうち、主体的に希望者が集まり、参加者間で話し合い、学習会を開催することとなりました。平成22年10月の団体受検に向けて、8月から計4回、学習会を開催しました。学習会は、平日の18時15分から19時45分の約1時間30分間で、職員研修の会議室を使用して開催しました。テキストの費用は「自主研究グループ助成制度」を活用して支援(事後にテキスト相当額の返金を受ける)を受けることとしています。
受検後、受検者の方々のご感想はどのようなものがありましたか?
「業務で忙しい中、勉強する時間が確保できず、残念だった」「試験の出来はよくなかったが、勉強した部分はできていた。今後も勉強を少しでも続けていきたい」などの意見がありました。また、学習会の開催について、「参加者の意欲が高く、刺激を受けた」「直接の業務と関係ないため普段、聞けないことや知っている人が少ない知識なども聞きやすい、よい雰囲気だった」などの意見がありました。
受検後、原課に何かフィードバックされることはありそうですか?
倉敷市では、「知っている」「分かっている」だけに留まらず「できる」職員の育成と、連携協力して業務遂行できる、お互いに助け合い、認め合い、高め合う、明るく風通しのよい職場風土の醸成をめざしています。こういった育成すべき職員像を見据えた際、受検後、これまで以上に、「法」を意識した業務運営が図られるものと確信しています。また、高成績であった職員は、励みとなり、法務に関わる事務へも積極的に取り組めると思います。また、これから受検しようとする職員も増えると、組織全体に、法務の重要性が浸透し、また、「学ぶこと」の職場での理解や自己啓発への意欲が高まると期待しています。