結果分析データ

平成29年度全体講評(政策法務)

 今回、受検者の85%近くがクラス認定を受けるという良好な結果であり、平均点も600点を上回るという優秀なものであった。設問は、『公式テキスト』中の基本的なものから、『公式テキスト』以外から知識を得なければならない高度なものまで用意してあるが、高度なものでも正答率が50%を超えるものもあり、受検者の優秀さがうかがえる。  以下では、今回の結果の傾向を取りあげた上で、検定委員会が期待する、今後の学習姿勢について、コメントをする。

 今回の結果を出題分野別に見ると、どの分野でも6割以上と高い正答率を誇っている。とはいえ、『公式テキスト〔政策法務編〕』での第5章(自治制度の改革)、第6章(市民参加と市民協働)及び第7章(情報公開と個人情報保護)の正答率がやや低くなっている。  正答率の高くなかった問題を見ると、公文書管理法の内容や、国における個人情報保護制度の改革、議会制度といった直接の自治体の行政職員が関わらない事項や、附属機関のあり方を問うものなど行政実務と法規範の乖離のある事項についての問題であった。その点で、正答率が高くないことはやむを得ないかもしれない。 しかしながら、近年国政を揺るがしている公文書廃棄問題に見られるように、公文書管理は行政事務の信頼性を確保するための基本となるものである。法律が適用されないからと自治体職員の政策法務の知識として知らなくてよいというものではないし、もし公文書管理について国の行政機関と同じようなことをしているのであれば、住民からは、およそ地方分権時代を担う主体であるとは認められないであろう。 一方で政策法務論のベースとなる公共政策への理解や立法法務の基本的事項については正答率も高く、近年、自治体職員の方が力をつけてきたことがうかがわれ、大変頼もしい結果である。

 検定委員会は、問題の検討と受検者の声などを踏まえて、常に『公式テキスト』の見直しを進めている。各年版は、極端な増量を避けるという観点から基本的な構成・内容は改めていないものの、政策法務の知見として受検者に体得してほしい事項については、毎年、記述を補正・追加している。また、政策法務論の発展を踏まえて、重要なテーマについては、検定委員会メンバー等が関連の著作や小論などを公にしている。  まずは、2~3年に一度は『公式テキスト』の最新版と旧来の版とを比べ、どこを改めているのかという点に注目していただきたい(古本等を活用することも一案である)。さらに、近年の『公式テキスト〔政策法務編〕』は、『公式テキスト〔基本法務編〕』との役割分担と連携を重視しており、基本法務の知見を政策法務で応用するといった趣旨での問題作成も進めている。『公式テキスト〔政策法務編〕』と『公式テキスト〔基本法務編〕』を縦横に活用していただきたい。また、政策法務では、公共政策論の知見が大切になるので、『公式テキスト〔政策法務編〕』の第8章を味読した上で、関連文献にあたるとよかろう。  さらに、『公式テキスト〔政策法務編〕』の側注や、本文を掘り下げた内容について、巻末参考文献が扱っていることがある。検定委員会が吟味・厳選して載せているものなので、とくに最近の文献を眺め、政策法務(論)のトレンドを把握していただきたい。  なお、平成29年には、地方自治法及び民法の大きな改革が行われているので、これらの改正内容は、検定で出題されなくても、体得しておくとよいであろう。  個人で取り組むことに不安や限界を感じたときは、身近な人とグループを編成しながら、分担して報告し合う形で自己の知見を豊富にしていくという手法を試みてほしい。  自治体法務の能力向上は、関係者の自学・自修が基本である。受検者の各位が、今回の検定での好成績を持続させつつ、より一層の高得点を目指されることを願っている。

平成29年12月
自治体法務検定委員会