結果分析データ

平成30年度全体講評(基本法務)

 平成30年度自治体法務検定(基本法務)一般受検の検定試験は、申込者総数696名のところ、台風24号の影響で検定の実施が中止となった会場などがあったり、悪天候のために、あるいは災害対応のために検定会場に来られなかった受検者も大勢いたようで、受検者は、申込者の半分以下の337名にとどまった。

 総受検者の平均点は1000点満点中492点で、ここ2年ほど520点を超えていた平均点が500点を割り込んだ。また、昨年度検定では、久しぶりに900点を超えるプラチナクラスを獲得した受検者が2名現れたが、今回は再び0人となった。この2年間、10%を超える受検者が700点以上の成績を残したゴールドクラスに達していたが、それも今回は5%余りと残念な結果であった。主たる要因として、第一に、配点は多くないが、例年平均並みかそれ以上の得点率であった刑法分野の正答率が29.5%という極めて低い結果であったこと、第二に、民法の分野も正答率が47.7%と振るわなかったことが挙げられる。ちなみに、民法の契約分野からの設問45の正答率は3%、刑法の両罰規定に関する設問56の正答率は6%という極めて低い正答率にとどまった。
 他方で、憲法、行政法、地方自治法という自治体法務(基本法務)の中心分野は、ほとんどが50%以上の正答率であり、例年と変わらないどころか、むしろ良い結果となっている。最近4年間の前記3分野の合計得点(満点は680点)の結果を見ると、平成27年度は323点、平成28年度は348点、平成29年度は357点、そして今年度は363点となっており、毎年成績が上がり続けている。特に、近年成績が芳しくなく正答率が50%を割り込んでいた行政法の分野の正答率が56.7%(215点満点中122点)であったことは、朗報である。例えば、設問10の不利益処分の理由提示に関する最高裁平成23年6月7日判決の趣旨の理解を問う問題や、設問15の課税処分の公定力と国家賠償訴訟の関係に関する最高裁平成22年6月3日判決の判示の理解を問う問題は、難易度の高い問題であると考えられるが、それぞれ正答率が56%と65%であり、いずれも想定外の良好な結果であった。
 受検者の属性別でみると、その大部分を占める公務員の中では、都道府県職員が市区町村職員よりも成績がよい傾向は、例年通りであり、基礎自治体の職員のいっそうの奮起を期待したい。
 なお、今年度の検定は、前述のように、天候のために申込者の半分以上が受検できなかったという特殊事情があるので、例年の検定結果との比較は、あまり有意味ではないかもしれない。そうした留保付ではあるが、今回の結果について気になった傾向がある。検定テキストの序章「基本法務を学ぶにあたって」、第1章「憲法」、第2章「行政法」、第3章「地方自治法」、第4章「民法」、第5章「刑法」という順番で、各分野の正答率がきれいに逓減しているのである。序章の正答率が69%で、徐々に率が下がり、刑法で29.5%という結果である。例年の検定の成績では、このような傾向はみられない。もしかすると、テキストを前から順番に学習していき、終盤の民法や刑法の学習が不十分あるいは完了しないまま受検している方々が相当数いるのではないか、という感想を抱いた。  仮にこのような推測があたっているとすると、検定準備の時間が十分に確保できずテキスト全体の内容が未消化のまま受検した人たちは、今回の結果に落胆せず、未消化の部分をしっかりフォローして再受検してもらえれば、きっとよい結果を得られるに違いと思われる。天候のため受検できなかった方々も含め、捲土重来を期して、次回の検定を受検して頂ければ幸いである。

平成30年12月
自治体法務検定委員会