法的思考は法的問題以外の課題を解決するためにも有用だと思います。

内野正人様
南さつま市役所 衛生管理統括監兼市民環境課 内野正人様

基本法務コースでプラチナを取得された内野正人さんは、「第1回自治体法務検定・政策法務」にてプラチナに輝きました。以後「基本法務」を受検。6年間ゴールドを取り続け、今回見事にプラチナを獲得されました。現在、南さつま市に勤務されており、10月には初孫も誕生されました。二重の喜びの中、インタビューに答えていただきました。

現在の業務について簡単にご紹介ください。
現在は南さつま市衛生管理統括監兼市民環境課長として、住民基本台帳・戸籍などの窓口業務及び生活環境などの環境を担当しております。課長として6年目、統括監(部長級ポスト)として2年目です。
「自治体法務検定」を受験されたきっかけは何でしょうか。
第一法規の社員の方から自治体法務検定を紹介されたのがきっかけでした。自治体法務検定がはじまったのは私が文書法制を担当していた時期に当たりましたし、それまで自治体職員を対象とした法学に関する検定試験はありませんでしたので、腕試しといいますか、自分の実力を試したかったということもありましたし、スキルアップにもつながりますし、仕事にも生かせるだろうと思って受験しました。
毎年受検される動機は何でしょうか
受験に当たっては、最上位のプラチナクラスを目指してきました。先に政策法務の検定試験が平成22年にはじまり、こちらはこの年プラチナクラスを獲得しました。翌年にはじまった基本法務ではプラチナクラスには届かず、プラチナクラスを獲得したいとの思いで、ずるずると(笑)受験してきた次第で、7回目の受験でやっと、現役中にプラチナクラスを獲得できてうれしく思っています。
加えて、知識の再確認、法制度面の改正をチェックするためにも受験してきました。
受験勉強はどのようにされましたか。その方法について具体的にご紹介ください。
基本法務を最初受験したときは3か月ほど勉強しましたが、その後はだんだんと短くなりまして、今年は2週間ほどでした。9月は議会のある月ですし、決算の審査もありますので、時間がとれない事情など制約もありまして、2回の3連休に集中して勉強しました。
最初のころはテキストを数回ほど読み、レジュメを作成して勉強しました。その後は、テキストを1、2回読み、法改正部分、記述の変更箇所をチェックしてレジュメを修正し、レジュメで知識の確認をしています。今年もテキストは1回読んだだけでレジュメ(120頁程度)を修正し、知識の確認をしました。もちろん作成したレジュメで疑問等を感じた場合はテキストに戻ったり、各法分野の基本書や判例をチェックしたりして勉強しました。加えて、当然のことですが、過去問で知識の定着度を確認して検定には臨んでいます。
「基本法務」のテキストについて感想をお聞かせください。
テキストは読みやすいですし、図表も入れてわかりやすくしていますから、はじめて勉強される方でも取り組みやすいのではないかと思います。5分野の基本的事項をテキストに挿入することと450頁程度の分量にまとめることに先生方は相当の苦労と工夫をされていると感じています。個人的には、とりわけ行政法が行政過程に併せて工夫されて作成されていると思っておりまして、一連の流れがわかりやすく好きな記述です。
テキストの改善点があればお挙げください。
このテキストを読み慣れていますし、特段改善点は感じません。
問題の記述について感想をお聞かせください
全般的な感想として、2時間で70問を解答する試験のため、解いても解いてもまだ問題があり、歳とともに疲労感が増してきていることを痛感しています。
 解答の目標として、問題数、長文問題も考えて、短文の設問は1問1分程度を目安に80分程度で解き、解答とマークをチェックし、自信のない設問を再度考えるスタンスで受験してきましたが、特に、平成29年度の試験は長文が多いうえに後半に並んでおりまして、相当に焦りましたし疲れた試験でした。分量が多かったと感じました。設問及び肢が長文になる問題が多くなると時間的に厳しいと思います。
問題の記述については、短文の設問で一読して問題の趣旨がわからないということもありますが、全体的には気になるということはありません。
設問も単なる知識問題を考えさせる問題にするなど年々工夫が加えられて来ていると感じますし、問題を解きながらも、このような設問にするのかと感心・感動したりしております。その意味では先生方の並々ならぬ取組を感じている次第です。 また、判例を取り上げる設問も多くなっていると思いましが、仕事をするうえで判例にも留意していただきたいとのメッセージかと思っております。

ありがとうございます。試験問題の長文化については今後改善させていただきます。次の質問です。業務上、いろいろな問題に直面されるケースがあろうかと思いますが、「法律」「判例」あるいは「条令」に一度立ち返り問題解決を図られた事例があればご紹介ください。
個別事案になってしまいますので、具体的にはお答えできませんが、個人情報保護条例や情報公開条例に基づいて開示請求があった場合には、条文はもとより、開示・不開示や存否応答拒否等の判断について、判例や解説書(宇賀先生の個人情報保護法逐次解説や新・情報公開法の逐条解説など)に当たって解決しています。 申請に対する処分の事案では、行政法の解説書や過去の判例を調べたうえで許認可許可の判断や不許可の場合の理由の提示等を行ったこともあります。
法務知識をスキルとして活用することの必要性はお感じになりますか。
自治体の行政事務は法令・条例等に従って処理しているわけですから、当然必要であると思っています。たとえば、公務員には人事異動はつきものですから、異動先ではじめて目にする法令であっても法務知識のスキルがあればスキルのない職員に比べれば、はるかにスピーディかつ適切に事務を処理し、課題を解決できると思います。
また、日々事務を行っている中でも、事実関係が類似していても結論が異なる場合はあるわけですから、その見極めができるためにも法務知識は必要だと感じます。本市には任期付弁護士の政策法務監がおりますが、その見極めができなければ相談もできませんし、紛争の未然防止にもつながりませんから、見極めができる法務知識は必要です。加えて、今次、社会のニーズの多様化や進展等に応じて新たな法制度がかなりのスピードで制定されていると思っていますが、法務知識のスキルはこれらに対応していくためにも必要です。
自治体法務検定を受験してよかったと思われたのとどういう場面ですか。
これまで8回受験してきました。1年に1回ですが、2時間集中して考える時間を持てたということは、私にとっては有意義な時間を持てたということが言えます(試験を受ける機会というのはそうそうありませんから)。 今回、念願だったプラチナクラスをとれたことはよかったと思っています。また、先生方が作問するにあたっては大変なご苦労をされていると思っているところでして、設問の中にはこれまで考えたこともないものや気づかない論点のものがあります。何年の問題か記憶にはないのですが、確か保安林解除の処分性に関する設問が特に印象深い問題でした。 受験して新たな発見もあり、受験自体が勉強になるということが大きいと思っています。勉強不足を感じて、また勉強をやる気にもなります。
最後に、このインタビュー記事を読まれた全国の自治体職員の方に一言お願いします。
自治体職員である以上、法令、条例等の法規と関りをもって仕事をしているわけですから、法務知識を身に着けることは単に仕事のためと言うだけにとどまらず、数十年の公務員生活が楽しく豊かなものにもなるのではないかと思っています。日々想起する法的課題に右往左往するよりしっかりと向き合える職員であったの方がよいはずですし、法的思考は法的問題以外の課題を解決するためにも有用だと思います。
それには、自治体法務テキストは著名な先生方が、わかりやすい言葉で理解が進むように著述されていますから、まずはこのテキストを座右の書として法律の基本を是非学んでほしいと思います。その成果として自治体全体の法務能力の底上げにつながっていくことになればとも思っています。